「ナポリを見て死ね」と、よく観光ガイドブックに書いてある。
しかし、今のナポリはもはや世界のゴミ問題先進地区という感じだ。ごみ焼却処分場の土地問題によって、この抗議運動が起こったとされているが、ニュースをおってみると、ゴミ処理経済に食い込んでいる、イタリア特有の社会風土「マフィア経済」の影響がちらほらと見え隠れする。日本の不正軽油の闇産業と同じような構図だ。
まず、この記事のデモ隊・警官隊の衝突している場所だが、イタリアはナポリ市の北西10キロほどの郊外にあるキアイアーノ(Chiaiano)という地区である。グーグルアースでも簡単に見つけられるが、一般的な旅行ガイドブックにはあまり載っていない、もっとも、ゴミ処理場候補地になるくらいだから、観光目的で訪れる人はいないであろう。
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ナポリ市内からは、トレド通りをカポ・ディ・モンテ公園にむかってまっすぐ北上し、エミリオ・スカリオーネ通りにそって森林の点在する住宅街を抜けていく。この道路沿いは、郊外型の住宅地がかなりつまっているが、このキアイアーノ周辺だけが、昔の火山活動の影響か、地形の起伏がやや急になっていて、森林がまだ相当程度残っており、住宅地としてはまだ開拓されていない土地だ。
ここに欧州委員会基準の大型ごみ処理施設をつくって、現在ナポリ市内でもめているゴミ処理の迅速な対応をすすめようというのが、カンパーニャ州政府の政策であるが、この処分場土地問題に反発した住民との小競り合いが起こったというのが、報道であがっている写真である。
このゴミ処理問題、欧州委員会がイタリア政府を相手取って欧州裁判所に提訴するという問題にまで発展しているが、提訴自体がゴミ処理の迅速化をすすめるわけはなく、ナポリ市内に蓄積するゴミとこれによる市内暴動を見かねた欧州委員会が形だけの非難をしているに等しい。
では、なぜこのようにゴミは市内に蓄積され、現存する処理場は閉鎖され、新しい処理場予定地では抗議行動が起こされるのであろうか?このゴミ問題、数ヶ月ほど前から顕在化しつつあると報道などでは言われてきたが、かなり歴史が古いようである。
そもそも、ナポリという街は港湾都市で人の出入りが多く、市街区で100万、近郊を入れて300万人の住民人口を持つ。市中心部はかなりの過密状態である。観光に依存した産業構造で、レストラン・ホテル業が多い。今回報告されているゴミの集積も、市街区の飲食店からだされたものが多く、観光依存の住民生活、ゴミ問題による観光客激減と、大きな打撃を与えている。
では、この問題のこじれは、新ゴミ処理場候補地周辺の住民による反対運動が原因であろうか。イタリアメディアの報道によると、事態を複雑にしているのは、地元ナポリ社会の一構成員であり、しかもゴミ処理産業に深くかかわっている低所得労働者層をシンジケートで束ねる「カモレッラ(Camorella)」と呼ばれる独特のネットワークである。これは、一般にはイタリアの代表的なマフィア的集団と目されているが、このカモレッラが、ゴミ処理業界の枢要を握り、同時に、利権を握ってきた。
これに対して、イタリア政府はEU全体で導入した環境基準を盾にとって新しいゴミ処理場施設およびその関係業界からのカモレッラ組織の排除をもくろんだのだが、これに真っ向から対峙する産廃業者のゴミ回収作業拒否によって、市内のゴミ蓄積がなされてきたというわけだ。
この点、日本の産廃業、とりわけ不正軽油製造により脱税と硫酸ピッチによる環境悪化に手を貸してきた石油業界も同根の問題をもつ。おりしも原油高騰により、石油・ガソリンなどの需要が逼迫する中で、硫酸ピッチ摘発に対する行政の手も緩みがちになっているのではなかろうか。イタリア・ナポリゴミ問題の例は、こうした一般市民社会・行政・特殊職能集団の三角関係を如実に反映していて、日本・イタリアに普遍的に存在する問題といえよう。
おそらく、こうした一元的な見方だけがすべてでは無いかもしれないが、マフィアは「ゴミ問題」を「人質」にとって、イタリア社会での生き残りを図ろうとしているかのように見える。
タグ:ゴミ問題、ナポリ


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